家を売ってまとまったお金が入ると、次に気になるのは税金である。「売った金額の2割くらい持っていかれるらしい」という噂を聞いて、ひやっとした人もいるかもしれない。
安心してほしい。税金がかかるのは売った金額ではなく、もうけの部分だけだ。しかも自分が住んでいた家なら、そのもうけから最大3,000万円を差し引ける特例がある。多くの人は、結果として税金が0円になる。
ただし、0円になるには条件がある。この記事では、架空の山田さんに家を売ってもらい、税金がいくらになるかを3パターンで計算してみた。
税金がかかるのは「もうけ」だけ
家を売ったときの税金は、次の「譲渡所得」にかかる。
譲渡所得 = 売った金額 −(取得費 + 譲渡費用)
- 取得費:その家を買ったときの値段。ただし建物は年々古くなるので、その分(減価償却)を差し引く
- 譲渡費用:売るためにかかった費用。仲介手数料、印紙税、測量費など
つまり、買った値段より高く売れなければ、そもそも税金はかからない。
税率は「5年」で2倍変わる
譲渡所得にかかる税率は、持っていた期間で大きく変わる。
| 所有期間(売った年の1月1日時点) | 税率(所得税・住民税など) |
|---|---|
| 5年以下(短期) | 39.63% |
| 5年超(長期) | 20.315% |
| 10年超のマイホーム(軽減税率) | 6,000万円以下の部分は14.21% |
注意したいのは、「売った年の1月1日時点」で数えることだ。買ってからちょうど5年たった日に売っても、その年の1月1日時点ではまだ5年に届いていないので、短期の税率になる。数か月待つだけで税率がほぼ半分になることもあるので、売る時期の見極めは大事だ。
登場人物:マンションを売る山田さん
- 20年前に3,000万円で買ったマンション(建物1,800万円、土地1,200万円)に住んでいる
- 相場が上がって、4,000万円で売れることになった
- 仲介手数料など、売るための費用は約140万円
山田さんは架空の人物で、数字は説明用の仮定だ。
パターン1:特例を使わない場合
まず取得費を出す。土地は古くならないので1,200万円のまま。建物は20年分の減価償却を差し引く。マイホームの鉄筋コンクリート造なら、ざっくり次の計算になる。
1,800万円 × 0.9 × 0.015 × 20年 = 486万円
建物の取得費は1,800万円−486万円=1,314万円。土地と合わせて、取得費は2,514万円だ。
譲渡所得 = 4,000万円 −(2,514万円 + 140万円)= 1,346万円
所有期間は20年なので長期。1,346万円×20.315%で、税金は約273万円になる。
これが「売ったら税金で持っていかれる」の正体である。
パターン2:3,000万円控除を使う場合
山田さんは、このマンションに住んでいた。自分が住んでいた家を売るなら、譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける。
1,346万円 − 3,000万円 → 0円
税金は0円。273万円がまるごと消えた。
主な条件はこうなっている。
- 自分が住んでいる家、または住まなくなってから3年目の年の12月31日までに売ること
- 売る相手が、親子や夫婦など特別な関係の人ではないこと
- 前年と前々年に、この特例を使っていないこと
所有期間の条件はない。買って1年で売っても使える。
パターン3:昔の契約書をなくしていた場合
ここが落とし穴である。取得費は、買ったときの売買契約書などで証明する必要がある。20年前の契約書をなくしてしまい、買った値段が分からないとどうなるか。
そのときは、取得費を「売った金額の5%」として計算することになる。4,000万円×5%で、取得費はたった200万円だ。
譲渡所得 = 4,000万円 −(200万円 + 140万円)= 3,660万円
3,000万円控除を使っても、660万円が残る。10年超の軽減税率を使っても、税金は約94万円だ。
契約書が1枚あれば0円だった税金が、なくしただけで約94万円になる。家を買ったときの契約書と領収書は、売る日まで絶対に捨てないでほしい。
3パターンを並べるとこうなる
| パターン | 譲渡所得 | 税金 |
|---|---|---|
| 1. 特例なし | 1,346万円 | 約273万円 |
| 2. 3,000万円控除 | 0円 | 0円 |
| 3. 契約書なし+控除 | 660万円 | 約94万円 |
税金が0円でも、確定申告は必要
3,000万円控除は、自動では適用されない。売った翌年の2月16日から3月15日までに確定申告をして、初めて使える。「税金は0円だから何もしなくていい」ではなく、「0円にするために申告する」と覚えておきたい。
もう一つの注意:住宅ローン控除とはどちらか一方
家を売って買い替える場合、3,000万円控除を使うと、新しい家で住宅ローン控除が使えなくなることがある。どちらが得かは、売却益の大きさとローンの額で変わる。詳しくは「売り先行」と「買い先行」、結局どっちで損するのかの税金の章で整理している。
まとめ:売る前にやる3つのこと
- 買ったときの契約書と領収書を探す:取得費の証明がすべての出発点
- 所有期間を「1月1日」で数える:5年、10年の境目の手前なら、売る時期をずらす価値がある
- 住まなくなった日を確認する:3,000万円控除の期限は、住まなくなってから3年目の年末
家の税金は難しそうに見えるが、計算の形はシンプルだ。売る前に一度、自分の数字で電卓を叩いてみてほしい。個別の判断は、税務署や税理士に確認するのが確実である。