この秋、不動産のニュースが少しややこしい。

9月には「基準地価、5年連続の上昇」と報じられた。一方で、少し前から「首都圏の中古マンション、6年ぶりの下落」という見出しも出ている。上がっているのか、下がっているのか。家を売ろうか、買おうかと考えている人ほど、どちらを信じればいいのか迷うはずだ。

結論から言うと、どちらも本当だ。ただ、測っているものが違う。この記事では、公的なデータを使って「いま何が起きているのか」と「売る人・買う人はどう受け止めればいいのか」を整理した。

地価は、まだ上がっている

まず土地の値段から。国土交通省が9月に発表した2026年の都道府県地価調査(基準地価、7月1日時点)では、全国平均で住宅地が1.0%、商業地が2.9%上がった。全用途でも、住宅地・商業地でも、5年連続の上昇だ。

地域別に見ると、東京圏と大阪圏は上げ幅がさらに広がった。一方で名古屋圏や、札幌・仙台・広島・福岡の地方四市は、上がってはいるものの上げ幅が縮んでいる。住宅地の全国最高地点は東京都港区赤坂で、1㎡あたり750万円だった。

土地だけを見れば、全国的には「まだ上昇中、ただし勢いには地域差」というのが今の姿だ。

首都圏の中古マンションは、曲がり角に来た

次に、実際に売れた家の値段。首都圏の中古住宅の成約データは、東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が毎月公表している。ここに、はっきりした変化が出ている。

月首都圏の中古マンションで起きたこと
2026年5月成約㎡単価が前年より3.9%下がる。2020年4月以来、73か月ぶりの下落
2026年7月成約㎡単価は3か月連続の下落。売りに出ている物件(在庫)は5か月連続で増加
2026年8月成約㎡単価は前年より3.8%下落。成約件数は10.5%減り、5か月連続の減少

つまり「売れる数が減り、売りに出ている数が増え、売れる値段が下がってきた」。売り手が多く、買い手が少ない状態に傾きつつある、ということだ。

ただし、値段の水準そのものはまだ高い。2026年7月の首都圏の成約価格は5,267万円で、前年からの下げ幅は1%に満たなかった。8月も、成約価格の下げ幅は前年比で2.8%にとどまる。暴落ではなく、上がり続けてきた坂が平らになり、少し下りに入った、くらいの段階だ。

中古戸建は、まだ強い

おもしろいのは、同じ首都圏でも中古の戸建ては動きが違うことだ。成約価格は2026年8月まで8か月連続で前年を上回っている。

マンションの値段が先に上がりすぎて手が届かなくなった人が、戸建てに流れている、という見方もできる。ここは推測だが、少なくとも「家の値段がいっせいに下がっている」わけではない。

なぜニュースが食い違って見えるのか

理由は大きく3つある。

  1. 測っているものが違う:地価は「土地」の値段で、中古マンションの成約単価は「建物込みの部屋」の値段だ。都心のマンションは土地の持ち分が小さく、値段の多くを建物と人気が決めている。
  2. 時点と頻度が違う:基準地価は年に1回、7月1日時点の評価だ。レインズの数字は毎月の実際の成約で、変化がずっと早く出る。
  3. 買う人の財布が変わった:住宅ローンの金利が上がり始め、同じ月々の返済で借りられる額が減っている。これは土地よりも、すでに高くなっていたマンションに先に効きやすい。

売りたい人は、どう受け止めるか

在庫が増えるということは、買い手が「ほかの物件と比べる」余裕を取り戻したということだ。これまでのように、強気の値段で出してもすぐ売れる、とは限らなくなってきた。

  • 相場は「売出価格」ではなく「成約価格」で見る:ポータルサイトに並ぶ値段は、売れ残りも含めた希望価格だ。調べ方は「その家、いくらで売れる?」にまとめている。
  • 「もう少し待てば上がる」を前提にしない:首都圏のマンションに限っては、ここ数年の「待つほど高く売れる」流れが止まりつつある。
  • 住み替えなら順番を考える:売りが長引くと、新居の支払いと重なって苦しくなる。「売り先行」と「買い先行」の考え方が、いつも以上に大事になる。

買いたい人は、どう受け止めるか

買い手にとっては、ようやく値段の交渉ができる空気が出てきた、と言える。売れ残っている物件なら、値下げの相談に乗ってもらえる場面も増えるだろう。

ただし、金利が上がっている以上、物件の値段が少し下がっても、総返済額では得にならないこともある。値段だけでなく「月々いくら、何年で、総額いくら」で比べたい。

数字を見るときの注意

最後に、データの読み方で気をつけたい点を挙げておく。

  • 首都圏の平均は、あなたの家の値段ではない:都心と郊外、駅近とバス便、築浅と築古で、動きはまったく違う。平均が下がっても、上がり続けているエリアもある。
  • 1、2か月で判断しない:月ごとの数字は、その月に売れた物件の顔ぶれで上下する。数か月続けて同じ方向に動いて、はじめて流れと言える。
  • 国の指数は少し待ちが必要:国土交通省の「不動産価格指数」は、2026年1月分以降の公表が延期されている(9月末時点)。当面は、レインズの月次データと地価の発表をあわせて見るのが現実的だ。

家の値段は、ニュースの見出しほど単純には動かない。自分の家や、買いたいエリアの成約データを一度見てみると、見出しとは違う景色が見えてくるはずだ。

参考