マンションの総会の議事録は、地味な書類だ。数ページにわたって、議案の番号と「賛成多数により承認された」が並んでいる。持ち主でも、届いたら流し読みして引き出しにしまう人が多いだろう。
ところが、この地味な書類には、マンションのこれからが先に書いてある。私は、区分マンションのオーナーとして郵送で届いた議事録で、管理費・修繕積立金をほぼ2倍に値上げする案が出ていることを知った(詳しくは区分マンション投資でやらかした話)。振り返ると、買う前に過去2〜3年分の議事録を読んでおけば、少なくとも心の準備はできた。
この記事では、その「議事録のどこを読めばいいのか」を整理する。
そもそも総会と議事録とは
分譲マンションの持ち主(区分所有者)は、全員で管理組合をつくり、建物の管理を話し合いで決めている。その話し合いの場が総会(法律の言葉では「集会」)だ。
区分所有法では、管理者は少なくとも毎年1回、集会を招集しなければならないと決められている(第34条第2項)。いわゆる通常総会だ。そして、集会の議事については、議長が議事録を作り、「議事の経過の要領及びその結果」を記載することになっている(第42条第1項・第2項)。
つまり議事録には、「何が決まったか」だけでなく、「どんな話し合いを経て決まったか」の要点も書かれている。読むべきなのは、むしろこの経過のほうだ。
議事録で見るべき5か所
- 管理費・修繕積立金の値上げの話:可決された値上げはもちろん、「検討」「継続審議」で止まっている議案も見る。検討が始まっている時点で、数年以内に値上げが来る可能性は高い
- 長期修繕計画の見直しと大規模修繕の予定:計画の見直しで工事費が増えていないか、大規模修繕の時期が近いのに積立金が足りないという話が出ていないか
- 会計報告と滞納の話:修繕積立金の残高、管理費の滞納が増えていないか。滞納が多いと、積立計画そのものが崩れる
- 質疑応答の中身と、賛成・反対の数:住民が何に不満を持っているか。反対が多い議案は、次の総会でまた揉めるかもしれない
- 規約や使用細則の変更:ペット、民泊、リフォーム、駐車場など、住み方や貸し方に関わるルールが変わっていないか
特に1番目と4番目は、議案書(総会の前に配られる資料)だけでは分からない。議案書には「何を決めるか」しか書いていないが、議事録には「住民がどう反応したか」が残る。
読むときのコツ
議事録は、1年分だけ読んでも流れが分かりにくい。おすすめは、過去2〜3年分を並べて読むことだ。
| 見るもの | 1年分だけ読むと | 2〜3年分並べると |
|---|---|---|
| 値上げの話 | 「検討中」で終わっていて重大さが分からない | 毎年話題に出ていれば、先送りされているだけと分かる |
| 修繕積立金の残高 | 多いか少ないか判断しにくい | 増えているか、工事で減ったまま戻っていないかが分かる |
| 滞納 | その年の数字だけ | 増えているか減っているかが分かる |
| 揉めごと | その年だけの問題に見える | 同じ話が繰り返されているかが分かる |
もう一つ、出席者の数も見ておきたい。総会の決議は、規約に別段の定めがなければ、出席した区分所有者とその議決権の各過半数で決まる(第39条第1項)。出席者が少ないマンションでは、関心のある一部の人の意見で物事が決まりやすい。逆に、出席や委任状がしっかり集まっているマンションは、管理に関心のある住民が多いと考えられる。
議事録はどうやって見られるのか
持っている人
区分所有法では、議事録は規約と同じく、管理者などが保管し、利害関係人から請求があれば、正当な理由がない限り閲覧を拒めないとされている(第42条第5項で第33条を準用)。保管場所は建物内の見やすい場所に掲示することになっている。
実際には、総会のあとに議事録が各戸に配られたり、郵送されたりすることが多い。貸していて自分は住んでいない人も、郵送先を管理会社に届けておけば受け取れる。届かない場合は、管理会社か理事会に問い合わせてみるといい。
買う前の人
買う前の段階では、自分で管理組合に請求するよりも、売主か仲介会社を通して取り寄せてもらうのが現実的だ。売主は区分所有者なので、手元に議事録を持っているはずである。
あわせて、管理会社が発行する重要事項調査報告書(管理に関する報告書)も頼んでおきたい。宅建業法の施行規則では、区分所有建物の売買の重要事項説明で、修繕のための積立ての規約の定めと既に積み立てられている額、通常の管理費用の額、維持修繕の実施状況の記録があればその内容などを説明することになっている(第16条の2)。ただ、説明を受けるのは契約の直前になりがちだ。数字は早めに手に入れて、議事録と照らし合わせておくといい。
売る人にとっても、議事録は効く
議事録は買う人だけの書類ではない。売るときにも、買い手は同じものを見る。
- 値上げが決まったばかりなら、その分は買い手の計算に入る。投資用なら利回りで、住む人なら毎月の支払いで、値段が厳しく見られる
- 逆に、値上げや大規模修繕を済ませたばかりで、積立金が計画どおりに貯まっているなら、それは売るときの安心材料になる
- 揉めごとが続いている議事録は、買い手を不安にさせる。持っている人は、総会に出て意見を言うことが、自分の部屋の値段を守ることにもつながる
修繕積立金の額が足りているかどうかは、国交省のガイドラインの目安と比べて確かめられる。やり方は修繕積立金は足りている?国交省ガイドラインで確かめる方法にまとめた。
まとめ:議事録は、マンションの「これから」が先に書いてある書類
マンションの値段や毎月の支払いを変えるできごとは、たいてい突然起きるわけではない。数年前の議事録に「検討」として顔を出し、少しずつ形になっていく。
買う人は、過去2〜3年分を並べて読む。持っている人は、届いたら値上げ・修繕・滞納の3か所だけでも目を通す。それだけで、「知らなかった」はずいぶん減るはずだ。
参考
- e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」(第33条、第34条、第39条、第42条)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(第16条の2)
- 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」