バス便の家は、バスが走っていることが前提だ。駅までの道のりの大半を、自分ではどうにもできない乗り物にあずけている。

バス便の家の体験記では、選ぶ前に「バスの本数」「始発と終バス」を確かめておくと安心だと書いた。ただ、今日の本数が10年後も同じとは限らない。この記事では、時刻表の読み方と、減便・廃止のリスクを家を決める前に調べる方法をまとめる。

減便・廃止は、いま実際に増えている

まず状況を確認しておく。国土交通省の関東運輸局が2025年3月にまとめた、管内の自治体への調査がある。

  • 2021年4月から2024年12月までに、路線バスの減便・廃止があった自治体は65.6%
  • 2024年4月以降の減便・廃止の理由として「運転者不足」を挙げた自治体は85.4%で、「利用者の減少」を大きく上回った

利用者が少ないから減る、だけではない。乗る人がいても、運転する人がいないから減る、という状況になっている。国土交通大臣も2023年の会見で、運転者不足による減便・廃止が相次いでいることに危機感を示している。

「2024年問題」とは何だったのか

背景のひとつが、いわゆる「2024年問題」だ。バスの運転者の働き方には、厚生労働省の「改善基準告示」というルールがあり、2024年4月1日から厳しくなった。

項目2024年4月以降のバス運転者の基準
勤務と勤務の間の休息継続11時間を基本とし、9時間を下回らない(以前は継続8時間以上)
1日の拘束時間13時間まで。延長しても最大15時間
1年の拘束時間原則3,300時間まで

運転手の体と乗客の安全のためには大事な改正だ。ただ、同じ人数で回せる便は減る。早朝の始発と深夜の終バスを同じ人が担当する、といった組み方がしにくくなるので、始発が遅くなる・終バスが早くなる形で影響が出やすい。

時刻表で見るべき5つのところ

バス会社のサイトや停留所の時刻表で、次のところを見ておきたい。

  1. 朝7〜8時台の本数:通勤で使う時間帯に、1時間に何本あるか。10分に1本なら待ち時間はほぼ気にならない
  2. 始発と終バス:自分の出勤・帰宅時刻に合うか。終バスが21時台か23時台かで、暮らし方が変わる
  3. 平日と土休日の違い:土休日は本数が大きく減る路線も多い。学校が休みの期間だけ別ダイヤになる路線もある
  4. 行き先と経由:同じバス停でも、行き先や経由地が違う系統が混ざっていることがある。自分の駅に行く便だけを数える
  5. ダイヤ改正日:時刻表の隅に「〇年〇月〇日改正」と書いてある。最近改正されていれば、何が変わったのかを調べる

将来のリスクを調べる方法

減便を正確に予測することはできない。それでも、手がかりは公開されている。

  1. バス会社の「お知らせ」の過去分を読む:ダイヤ改正のお知らせを数年さかのぼると、その路線が増えているのか減っているのかが分かる。「運転士不足のため」と書かれた減便が続いていれば要注意だ
  2. 自治体の「地域公共交通計画」と会議資料を見る:2020年の法改正で、地域公共交通計画の作成は自治体の努力義務になった。市区町村のサイトで「地域公共交通計画」「地域公共交通会議」と検索すると、路線の見直し案や利用状況が載っていることがある
  3. 路線の数と事業者の数を見る:駅まで行ける路線が1本だけか、複数の系統・複数のバス会社があるか。1本しかない路線は、それがなくなると代わりがない
  4. バス以外の手段を確かめる:自転車で駅まで行けるか、コミュニティバスやデマンド交通(予約制の乗り合い)があるか
  5. 実際に乗って、混み具合を見る:ガラガラの路線より、そこそこ混んでいる路線のほうが利用者の減少では減りにくい。ただし運転者不足による減便は、混んでいる路線でも起こりうる

ちなみに、路線バスの路線を休止・廃止するときは、原則として6か月前までに国土交通大臣への届出が必要だ(道路運送法第15条の2。旅客の利便を阻害しないと認められる場合は30日前)。廃止がいきなり翌週に来ることは考えにくいが、本数を減らす見直しは、これとは別の形で行われることもある。

買う人ほど、減便リスクは重い

借りている家なら、バスが不便になれば引っ越せばいい。買った家は、そう簡単には動けない。

しかもバスが減ると、自分の通勤が不便になるだけでなく、家の値段にも響く。売りに出したときの買い手から見ると、本数の少ないバス便の家は選びにくいからだ。バス便の物件が売りにくいことは、区分マンション投資でやらかした話でも書いた。

買うなら、上の調べ方をひととおり試しておきたい。売る側の工夫はバス便の家を売るとき・貸すときのコツにまとめている。

まとめ:時刻表は「今」を、お知らせと計画は「これから」を教えてくれる

時刻表を見れば、今の便利さは分かる。将来の不便さは、バス会社のお知らせの履歴や、自治体の交通計画のほうに書いてある。

バス便の家は、バスが走り続けてこそ「安くて暮らせる家」になる。家を決める前に30分だけ、時刻表の裏側まで調べておくと安心だ。

参考