タワマンを貸す・売るとき、広告の主役はたいてい眺望だ。高層階からの夜景の写真は、それだけで人を引きつける。

ただ、借り手や買い手が契約の前に気にするのは、眺望だけではない。毎月いくら払うのか、洗濯はどうするのか、朝のエレベーターは混まないか。そうした「眺望以外」の条件で、決まる・決まらない、値段が通る・通らないが分かれることは多い。

私は、タワマンに住んだこともあるし、別の物件をオーナーとして貸してもいる。この記事では、その両方の目線から、タワマンを貸す・売るときに効くポイントを整理する。

1. 管理費・修繕積立金:利回りと値段を直接動かす

一番効くのは、毎月の管理費と修繕積立金だ。

借り手にとっては家賃に含まれていて見えにくいが、オーナーにとっては毎月の手残りを、買い手にとっては毎月の支払いを直接左右する。投資用として売るなら、買い手は「家賃から管理費・修繕積立金を引いた手残り」で利回りを計算するので、値段にもそのまま響く。

私が持っている区分マンション(タワマンではなく築30年ほどの物件)では、管理費と修繕積立金がほぼ2倍に値上げされ、手残りが半分になった。売るときの値段も下がる計算になる。詳しくは区分マンション投資でやらかした話に書いた。

タワマンで気をつけたいのは、超高層ならではの修繕費だ。国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、20階以上のマンションの修繕積立金の目安を、平均で1㎡あたり月338円(多くの事例が入る幅は240〜410円)としている。70㎡の部屋なら、平均で月2万3千円ほどになる計算だ。

今の積立金がこの目安を大きく下回っているなら、いずれ値上げが来る可能性がある。貸す・売る前に確かめておきたいのは次の点だ。

  1. 長期修繕計画と積立金の残高:計画どおりの工事に足りているか
  2. 値上げの予定:段階的に上げていく計画になっていないか
  3. 過去の総会の議事録:値上げや大きな工事の話が出ていないか。読み方は総会の議事録、どこを読めばいい?と修繕積立金は足りている?にまとめた

売るときは、これらを先に開示できるようにしておくと、買い手の不安を減らせる。

2. 外干し不可:「乾かす手段」をセットで説明する

タワマンの多くは、バルコニーに洗濯物を干すことを禁止している。私が住んでいたタワマンもそうで、毎回乾燥機を使う生活になった(タワマンは洗濯物を外に干せない)。

外干しできないこと自体は変えられない。だから、乾かす手段がそろっていることを伝えるのが大事になる。

  • 浴室乾燥機があるか、電気式かガス式か
  • 洗濯機置き場にドラム式が入るか:サイズや扉の開くスペース
  • 部屋干しのスペース:窓際の物干しバーなど

貸すなら、ドラム式が置けることや浴室乾燥機があることを募集の説明に入れておくと、外干しを気にする人にも検討してもらいやすい。乾かし方ごとの電気代は部屋干しの電気代を比べるで計算している。

3. エレベーター:朝の待ち時間と、引っ越しの段取り

タワマンの住人は、毎日エレベーターを使う。だから、エレベーターの事情は暮らしやすさに直結する。

  1. 台数と、何階に止まるか:高層階用と低層階用に分かれているマンションもある。自分の部屋の階に止まるのが何台あるかで、朝の待ち時間は変わる
  2. 朝の混み具合:通勤時間帯に、実際に下まで降りてみる。内見の時間帯をずらすのも手だ
  3. 引っ越し・荷物の搬入のルール:エレベーターの予約や、使える時間帯が決まっていることが多い。入居者が入れ替わるたびに関わる話なので、貸すなら把握しておきたい

高層階は眺望が売りだが、そのぶんエレベーターに乗る時間も長い。眺望とエレベーターは、セットで説明できるようにしておくといい。

4. 共用施設:あるほど得、とは限らない

ジム、ラウンジ、ゲストルーム、キッズルーム。共用施設は、タワマンの分かりやすい魅力だ。

ただ、共用施設の維持費は管理費から出ている。使う人が少ない施設でも、維持費は全員で払い続けることになる。

貸す・売る側として確かめておきたいのは次の点だ。

  1. 今も使われているか:予約が埋まっているか、休止や縮小になっていないか
  2. 使用料がかかるか:無料か、別に使用料がかかるか
  3. 管理費の中で、どのくらいの割合を占めているか:管理組合の収支報告で分かる

借り手は共用施設を魅力と感じやすい。一方で、投資目線の買い手は「管理費を押し上げる要因」として見ることもある。誰に向けて説明するかで、伝え方を変えたい。

5. 駐車場:部屋と一緒には引き継がれない

国土交通省のマンション標準管理規約では、部屋を売ったり人に貸したりすると、その区分所有者の駐車場の契約は効力を失うとされている(第15条第3項)。多くのマンションの規約も、これを参考にしている。

つまり、今自分が駐車場を借りていても、買い手や借り手がそのまま使えるとは限らない。

  • 空きがあるか、順番待ちは何台か
  • 機械式なら、入る車の大きさ・重さ
  • 使用料はいくらか

車を持っている人にとっては、駐車場の有無で検討するかどうかが決まる。広告に「駐車場あり」とだけ書いて、実際には空きがない、というずれは避けたい。

6. 管理規約:貸すときの手続きと、借り手・買い手の条件

最後に、管理規約で確かめておきたいことがある。

  1. 貸すときの手続き:標準管理規約では、部屋を貸すときは借りる人に規約と使用細則を守ると約束する誓約書を管理組合に出させることになっている(第19条)。届出の書類があるマンションも多い
  2. 民泊の可否:標準管理規約には、民泊を認める書き方と禁止する書き方の両方がある(第12条)。タワマンでは禁止しているところも多い
  3. ペットの可否:飼えるかどうかで、借り手・買い手になりうる人の数が変わる

規約で見ておきたいところはタワマンの管理規約、住む前に読むべき5か所に詳しく書いた。

貸す前・売る前のチェック表

ポイント借り手が気にすること買い手が気にすること用意しておきたいもの
管理費・修繕積立金(家賃に含まれる)毎月の支払い、値上げの予定、利回り長期修繕計画、総会の議事録
外干し不可洗濯をどうするか同じ浴室乾燥機・洗濯機置き場の情報
エレベーター朝の待ち時間同じ台数、止まる階、搬入のルール
共用施設使えるか、使用料管理費への影響施設の一覧、使用料、収支報告
駐車場空きがあるか同じ空き状況、車のサイズ制限
管理規約ペット、楽器など民泊、リフォームの制限管理規約、使用細則

自分で住んでいた部屋を売るなら、税金も

自分で住んでいた家を売るときは、条件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例がある。国税庁によると、住まなくなった家を売る場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件の一つになっている。

転勤などで「しばらく貸して、そのあと売る」と考えているなら、この期限は頭に入れておきたい。特例の条件は家を売ったら税金はいくら?で整理している。

まとめ:眺望は入口、決め手は「毎月」と「毎日」

タワマンの眺望は、借り手や買い手を呼び込む入口としては強い。ただ、契約を決める段階で効いてくるのは、毎月の管理費・修繕積立金と、洗濯やエレベーターといった毎日の暮らしの条件だ。

貸す前・売る前に、眺望以外のこれらの情報をそろえておく。それだけで、問い合わせへの答えが早くなり、値段の交渉でも説明がしやすくなる。

参考